槍ヶ岳
(標高3180m)
【 地 域 】北アルプス
【 天 候 】1日目/晴れ
       2日目/曇りのち雨
       3日目/雨
       4日目/曇りときどき晴れ
【 季 節 】夏
【 山行 形式 】双六小屋テント場(2泊)
【 山行 形式 】槍ヶ岳山荘泊(1泊)
【 入 浴 】平湯温泉

【 交 通 】
行き 新宿バスターミナル(23:00)〜平湯温泉バスターミナル(03:25) \5,400
平湯温泉バスターミナル(07:00)〜新穂高温泉(07:32) \870
帰り 新穂高温泉(13:46)〜平湯温泉バスターミナル(14:30) \870
平湯温泉バスターミナル(16:00)〜新宿バスターミナル(20:30) \5,400

【 コース 】
1日目 新穂高温泉〜(1:00)〜笠新道登山口〜(0:10)〜わさび平〜(0:20)〜登山口〜(1:10)〜秩父沢〜(1:10)〜シシウドガ原〜(1:10)〜鏡平小屋〜(1:00)〜弓折岳分岐〜(1:10)〜双六小屋
リアル 新穂高温泉(7:50)〜笠新道登山口(8:50)〜わさび平小屋(9:10)〜登山口(9:40)〜秩父沢(10:40)〜シシウドガ原(12:25)〜鏡平小屋(13:30)〜弓折岳分岐(14:45)〜双六小屋(16:25)
2日目 双六小屋〜(往復)〜三俣蓮華岳
リアル 双六小屋〜(約3時間のお散歩)〜三俣蓮華岳
3日目 双六小屋〜(0:45)〜樅沢岳〜(3:00)〜千丈沢乗越〜(1:50)〜槍ヶ岳山荘
リアル 双六小屋(8:00頃)〜樅沢岳〜千丈沢乗越〜槍ヶ岳山荘(13:00頃)
*雨と強風のため記録付けられず
4日目 槍ヶ岳山荘〜(1:00)〜千丈沢乗越〜(1:25)〜分岐〜(0:50)〜槍平小屋〜(1:00)〜滝谷避難小屋〜(1:00)〜奥穂高岳登山口〜(1:30)〜新穂高温泉
リアル 槍ヶ岳山荘(7:10)〜千丈沢乗越(8:10)〜分岐(09:00)〜槍平小屋(9:50)〜滝谷避難小屋(11:00)〜奥穂高岳登山口(12:20)〜新穂高温泉(13:35)


【 水補給ポイント 】
・笠ヶ岳新道登山口
・わさび平小屋
・秩父沢
・双六小屋
・双六岳〜三俣蓮華岳巻き道
・槍ヶ岳山荘
 (テント泊者は1L/200円)
・槍平小屋


【 食料補給ポイント 】
・新穂高温泉
・わさび平小屋
・双六小屋
・槍ヶ岳山荘
・槍平小屋
・穂高平小屋


【 休憩ポイント 】
・わさび平小屋
・秩父沢
・シシウドガ原
・弓折岳への分岐

・槍平小屋
・穂高平小屋


【 個人メモ 】
・予備の靴下とテント着はやはり欲しい
・ゴアソックスを持っていけ
・奥穂高登山口の水場はないと思え
・行動食は「カキの種」や「せんべい」等、つまみ兼にしよう
・乾燥室利用には細引きと洗濯ばさみがあると便利


【1日目】

当初の予定は『折立〜雲ノ平〜三俣蓮華岳〜双六岳〜槍ヶ岳〜新穂高温泉』の3泊4日だったけれど、『折立』へ行くための『富山駅』までの交通費、『薬師沢小屋』にテント場がないので小屋泊代を考えれば、『高瀬ダム』からの「裏銀座コース」ならばタクシー代がかかるけれども、『信濃大町駅』までの交通費と全テント泊のために安上がりになるとわかりコースを変更。

その予定だったのに前日の日曜日、ふっと思いついたのは「『新穂高温泉』から入って『双六小屋』から『鷲羽岳』をピストン、『双六小屋』から『西鎌尾根』を歩いて『槍ヶ岳』なら、タクシー代もかからないじゃん」

「水場の心配もなし」

「『新穂高温泉』へ行くバスは?」

「毎日アルペン号は予約終了だ」

「高速バスはどうだ???」

「空いてる!!」

キャンセルがあったみたいで1席空いていた。

ネットで予約を試みると

「よし無事ゲットだ!!」

しかしこの高速バスは『平湯温泉バスターミナル』で下車し、『新穂高温泉』までバスを乗り継いでいかなければならない。

乗り継ぎに約4時間待つことになるが、もう何度も行っている『平湯温泉バスターミナル』なんとか仮眠できる場所はある。

まぁ、『新穂高温泉』までタクシーで行っても3,200円だそうで、うまく他の登山者とシェアできればタクシーで行っても。

定時に仕事を終え、余裕を持って『新宿バスターミナル』へ。

お盆を終えた日曜夜なのに、登山者がたくさんいる。

しかしほとんどの登山者は「さわやか信州号」の白馬や上高地方面のバスに乗り込んでしまい、登山の格好をした人はほとんど居なくなってしまった。

『平湯温泉』へ行くバスに乗り込んだ登山者は、自分を入れて2人。

「この人とタクシー代シェアできるかな?」


乗車時間約4時間で『平湯温泉バスターミナル』着。

時間調整のために1時間ほど停車していたバスが発車してしまえば、シ〜ンと静まるバスターミナル。

一緒に降りたもう一人の登山者はとっととバスの乗車券を買っていたので「バスで行く覚悟なんだ」と思っていたが、行き先は『新穂高温泉』ではなく『乗鞍岳』だった。

AM3時台に『乗鞍岳』へ向かう通称「御来光バス」なるものがあり、どこから来たのかわからない他の登山者達もそのバスに乗り込んで行き、そのバスが発車するとバスターミナルにいるのは自分1人。

タクシーは停車してないので、寒さから避難できる場所を見つけそこで仮眠をし、いつのまにかバス停に並んでいた登山者達と共に『新穂高温泉』へ行くバスに乗車。

降りる予定の『新穂高温泉』バス停は大規模に工事中で、見慣れた『新穂高温泉』ではなく、驚いているうちにバスは終点の『新穂高温泉ロープウェイ』バス停に。



目の前には1日目のコースである『左俣林道』へのコース案内があり。ここで降りて良かったんだと安堵。

「良い天気だ、これが続いてくれれば」

楽だけれど面白くはない林道歩き、『笠ヶ岳』への『笠新道登山口』を過ぎ、そうめんが名物の『わさび平小屋』を過ぎ、『小池新道登山口』に到着。





見上げるようなこの先からの登り。

この『小池新道』2回ほど下っているが、その時「ここを登りたくはないな!と思っていたのに登ることになるとは」と嘆きながら、冷たい水場のある『秩父沢』を目指しスタート。

大きな岩がゴロゴロ転がっており、林道とは違い少し歩きにくい登山道、けれどグングンと高度を稼ぎ、振り返れば先ほどの登山口が下のほうに見えている。

登り始め、いつものように蓄積されたビールが汗となってダラダラと流れ落ち、ショルダーハーネスにぶら下げているフロントバックに垂れた汗がしみ込んでいく。

このフロントバック、胸に当たる風を防ぐようになってしまい、夏はぶら下げないほうが良いかと思うが、地図や水、行動食などがいつでも取り出せるのが便利すぎて使い始めたらやめられない。

日差しは暑いが沢で冷やされた空気が心地良く、つい長居してしまう『秩父沢』、登ってきた人も下ってきた人も、皆ここで休憩は当然。

次の休憩ポイント『シシウドガ原』までも似たような登山道が続くが、ビールが出尽くしたのか、体が慣れてきたのか、調子が上がってきたのか、順調に高度を稼ぎ始める。

ちょっとした椅子があり休憩にも最適な『シシウドガ原』で休憩していると、若者の集団が『鏡平小屋』で泊まるか『双六小屋』まで行くかどうかで悩んでいる。

話を聞いていれば、昨今の登山ブームで山登りを始めたばかりの集団のようで、皆のペースがバラバラなので、順調に歩ける人と時間がかかってしまう人と別れてしまっているようだ。

コースタイム通りに歩ければ、ここからでは16時前には『双六小屋』に着けるのだが、『シシウドガ原』までの途中で追い越したあの仲間のペースに合わせたら、18時過ぎになってしまうんではないかな。


『鏡平小屋』までは、「いつ到着するか?」「池糖に映る逆さ槍がいつ見えるのか?」と待ち遠しさを感じる登山道。

2年前はガスって展望はなかったけれど、15・6年前の快晴の下での展望は、写真や記憶に残っている。

今日は天気が良い。

きっと良い展望を望めるはずだ。

「きたぁ〜!!」

ちょっと雲は多いが、『槍ヶ岳』や穂高連峰がバッチリと見え、写真を撮りたい絵がいっぱいだ。

「15・6年ぶり、これが見たかったんだ〜」

青空の下での『鏡平小屋』のテラスは涼しい、展望は良いで気持ち良い。

抜き抜かれつしてた人は、あまりにも気持ち良すぎて缶ビールを飲んでしまったと言っていた。





『鏡平小屋』から『弓折岳』への分岐までの登りも、「ここを登りたくはないなぁ」と思っていた登りだ。


けれど登ってみれば『槍ヶ岳』や、3日目に歩く『西鎌尾根』の稜線がバッチリと見え、興奮を感じながら登ったせいかそれほど苦にならなかった。




過去2回、ここを下ったときはテント泊4日目、疲れた足で下っていたから「ここを登りたくはないな」と思った、ということもあるんだろう。








『弓折岳』への分岐からは、少し黄色くなり始めた陽の光に照らされてのお花畑を眺めながらの登山道。

花と穂高連峰、バックに『鷲羽岳』映す赤い屋根の『双六小屋』と、色とりどりのテントの花が絵になる。

予定通り『双六小屋』に到着。


テントを張り終えれば、待ちに待ったビールで乾杯。

明日も晴れることを願っていたが、だんだんと黒い雲が広がりだし、雨が降り始める。

ちょうど風の通り道になるという『双六小屋』のテント場、風が強くなり始めテントが暴れだすが、まだまだ『剣岳』登山で味わったほどの恐怖感ではない。

「明日は天気回復するだろうか?」と心配しながら、いつのまにか寝てしまった。





【2日目】

前回の反省から4時に起きようとするが、テントに当たる音で外は雨が降っているんだとわかる。

予定では軽身で『鷲羽岳』に登頂、『双六岳』山頂からの展望を写真、だったがこの天候では気が乗らない。

ギリギリの8時までテントの中で待ってみるが、雨は止んだけれどガスは晴れない。

このままテント内で停滞では退屈なので、雨具を装備し『三俣蓮華岳』までをピストンすることにする。

『双六岳』の山頂へは行っても無駄なので、行きは「まき道コース」、帰りは「中腹コース」、たくさん咲いている花を眺めながらのお散歩。

「まき道コース」の方が楽かなと思っていたけれど意外とアップダウンがあり、「中腹コース」の方がなだらかで楽だった。




雨に降られることなく13時頃テントに戻り、テント泊者でも食事を注文すれば15時30分まで『双六小屋』の食堂でのんびりできることを前回知ったので、注文した「おでん」をつまみに、持参した焼酎を飲みながら小屋の食堂で時間までのんびりと過ごす。

明日は晴れるかな?


【3日目】

昨日より雨が強く降っている。

風も強く、『剣岳』の時ほどではないが「テントのポール折れないかな?」と心配になったほどの強風だ。

4時にシュラフを出て朝食を済まし、外の様子を時折見るが、雨や風は止まない。

起き始めた周りのテント泊者達の「ダメだ、下山しよう」、「下山、下山」とあきらめて下山を決める声が聞こえる。

自分もこの雨と風の中、『西鎌尾根』を歩いて『槍ヶ岳山荘のテント場』でテント泊する気力が少し萎えてきている。

「1日早いが下山しよう」と決め、雨が止んでいる間にテントを撤収し、小屋へ水分補給ついでに天気予報を見ると、明日は「曇りときどき晴れ」と書いてある。

「明日は晴れる???」

今回の山登り、15・6年前の青空の下、登ろうと思えば登れたのに登らなかった『鷲羽岳』、『双六岳』山頂から屏風のように広がる穂高連峰の写真をもう一度撮りたい、など目的はあったけれど、2・3年前に『槍ヶ岳』へ来たけれど「高山観光」を優先してしまい、登れたのに登らなかった『槍ヶ岳』の山頂に登る、これが一番の目的だった。

自分の中でスイッチが入り、

「行こう!槍ヶ岳へ」

再び雨が降り出し、雨具を完全装備し、展望もなにもなく、雨に打たれ、強風に耐え抜き、風が遮られる尾根の左側で休憩を繰り返しながら、『樅沢岳』への登りから『西鎌尾根』を歩いて『千丈沢乗越』に辿り着く。

レインスーツの中の衣類は浸みてきた雨で濡れ、靴の中には水が浸み込み、靴下がビショビショに濡れているのがわかる。

替えの靴下は風呂上り後の靴下しかない。

この状態で明日下山するのは厳しい、風が弱まる様子もないので、さらに風が強いと思われる『槍ヶ岳山荘のテント場』で、ポールが折れないかどうか不安になりながらのテント泊も厳しい。

今夜は小屋泊まりを決意し、『槍ヶ岳山荘』への登山道へ向かう。

いやぁ〜、ここまでの疲れと、コースタイム1時間30分の文字を1時間見落とし、「30分程度か」と思っていたのになかなか着かなかったこともあり、この登山道が一番きつい思いをして、前回同様、展望のない『槍ヶ岳山荘』に到着。

外に出れない登山者と後から来る登山者で、小屋内は人があふれそうなほど。

この状況を見ただけで「やっぱり下山すれば良かった」と後悔。

そして割り当てられた部屋は小屋の一番奥である別館、宿泊費が安いから一番遠く不便な所へ隔離されるのかと思ったが、この別館は素泊まり泊者が泊まる館のようだ。

「素泊まりはこんな扱いなのか」と思ったが、すぐそばに自炊室があり、乾燥室も近い。

飯付宿泊者の館は人が多くごったがえしているが、素泊まり泊者が集められたこの館は人が少なく、各段定員7人の上下2段部屋の上段部屋には誰も寝ることはなく、下段部屋だけが2〜3人で使用とゆったりしていた。

しかも乾燥室や各館に置かれているストーブには、濡れた衣類やザック、靴下を乾かしたい人達が席の奪い合いをしているが、別館の自炊室に置いてあるストーブは、利用する人が少ないおかげで、ほとんど独占状態で靴下と中敷を完全に乾かすことができた。

『槍ヶ岳山荘』に宿泊するとき「素泊まりの方がいいんじゃね?」と思えたほどだった。

今日も雨、風が強く、外はゴーゴーと鳴っている。

小屋泊まりを選んで正解だったと納得し、明日の晴れを願って就寝。

【4日目】

小屋の朝飯時間は5時と知り、その時間帯が『槍ヶ岳』山頂への登り時だと思い、4時30分ころには小屋の玄関で明るくなるのを待つ。

ガスっていて小屋からすぐそばにあるはずの山頂は見えないが、雨は降ってないのが幸い。

もう山頂からの展望はいらない。

山頂に登って写真を撮ってくるだけで、『槍ヶ岳』に対する思いはもう終わらせたい。

小屋が混んでいる、登山ブームで登山者が多い『槍ヶ岳』にはもう来たくない、これからは見るだけの山でいい。

頃合を見計らって待っていると、同じ考えで準備していたカップルの登山者に誘われ、明るくなり始めた山頂へ向けて出発。

山頂まではほとんど垂直の岩登りや階段、鎖場ばかりだけれど、ガスに巻かれて展望がないおかげか、高度感を感じることがない。
それとうちら3人しか登っていないので、前や後に十分な間隔を広げられ、落石の心配がないのは精神に楽だ。

15分程度で山頂に到着。

もっと尖っていると思ったけれど、10人位は山頂に立てるほどの広さがありビックリ。

お互いに記念写真を撮り合い、朝飯を済ませて登って来た人たちが増えた始めた頃に下山。


ところどころ「登りコース」と「下りコース」の混ざり合うところで道の譲り合いになるが、順調に下ることができ、15分ほどで小屋に到着。

下りはちょっと苦労するかと思ったけれど、お尻を付くつもりで下ればいとも簡単に降りられてしまった。

悲願の『槍ヶ岳』登頂を終え、あとは『新穂高温泉』へ下るのみ。

靴下と中敷が乾いているので、靴が多少湿っていても足が濡れてふやけることはなく一安心。

濡れたテントが入っているザックの重さにも慣れ、昨日苦労した『千丈沢乗越』までの下りも苦にならなくなってきている。

ザックが体の一部になったと感じる時がきた。

この感覚が1日目からあればなぁ〜、たいてい4日目くらいからなんだよね。

下るごとに空には青空が広がり、陽が差しはじめたけれど、『槍ヶ岳』山頂付近にはずっと雲がかかっていて、まだまだ展望はなさそうだ。


明日から数日、また天気が崩れるとの予報だけれど、登ってくる登山者とたくさんすれ違う。

『槍平小屋』に着けば空には青空が見え、日差しが強い。

ここの空を見れば山頂付近がガスに巻かれているとは思えないだろう。







ここからは沢の音を聞きながらの登山道。

木々が生い茂り、水々しい苔が生えており、苔マニアに変身しつつある自分にとってここで「じっくり写真撮りてぇ」と思うが、バスの時間が迫っている。



予定のバスなら1時間以上余裕があるけれど、このペースならば1本早いバスに乗れる。

1時間早く東京に帰れる。

このへんがまだまだ人間できてないなぁ〜。

『奥穂高岳登山口』にある水場を頼りにしていたけれど水場が見当たらない?

そういえば前回も見つけられなかったなぁ、忘れてた。

休憩している人に「水場はどこですか?」と聞いてみると

「もうちょっと下ったところだけれど、そこからまた100mほど登ったところだよ」
と教えられ、

「でも、枯れてるかも」と一言。

もう行く気はない。

水はなんとか足りるだろうし、林道をちゃっちゃと歩いて帰ろう。




約1時間の林道歩き、ただ黙々と歩いていても退屈なので録音してあるTBSラジオ「ぱかぱか90分」を笑いながら聞いていたら、あっと言う間に『新穂高温泉ロープウェイ』バス停に着いてしまった。

ぎりぎり10分前だったが目的どおり1本早いバスに乗れ、『平湯温泉』で汗を流し、またまた運よく1本早い高速バスに変更もでき、予定より1時間早く『新宿駅』に着いた。



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